スペイン渡航記〜横村福音(ID賞、日本・スペイン友好賞)

セビーリャ・スペイン広場

第37回スペインギター音楽コンクールにてID賞、日本・スペイン友好賞を受賞し、スペインのセビーリャに留学をされている横村福音さんが、素敵なレポートを書いてくださいました。充実した旅の様子、刺激をたくさん受けて今後の演奏活動が益々期待される横村さんのレポートから、この賞が本当に素晴らしい賞であることを改めて感じています。留学先にて多大なるバックアップをしてくださっているフランシスコ・ベルニエール(Francisco Bernier)氏にも大変感謝申し上げます。
今回も引き続きID賞、日本・スペイン友好賞を授与してくださったIDホールディングス社に改めまして感謝申し上げますとともに、横村福音さんの今後のご活躍を祈念しております。

スペイン渡航記~横村福音
第37回スペインギター音楽コンクール優勝
参加フェスティバル:セビーリャ国際ギターフェスティバル

留学経緯

私は2021年9月からスペイン、アンダルシア州 セビーリャ高等音楽院でFrancisco Bernier 先生の下、ギターを学んでいます。中学生の時から高校卒業後はギター留学をしたいと思っていました。スペインに留学しようと思ったのは、いつも新しく取り組む曲を決めるときに自然とスペインの作品ばかり選んでしまうほどギター曲の中でスペインの作品が好きだったからです。スペインに留学することで、音楽に密接に関わる言語や、国の文化、生活を肌で感じ、少しでも本場の感覚を掴んで取り入れていきたいと思います。留学前、それまで一度もスペインに行ったことがなかったので、学校選びも兼ねて長期休みにスペイン旅行に行こうとしましたが、コロナ禍で気軽に海外に行くことができなくなってしまったため、音楽院の受験で初めてスペインに行きました。受験は先生の諸事情によりコルドバの音楽院で行われました。試験の合間を縫ってコルドバの「メスキータ」や、「ローマ橋」を観光したり、コルドバギターフェスティバルの開催期間だったので、David Russell 氏のコンサートや、Bernier 先生の組んでいるカルテットのコンサートを聴きに行きました。
試験が終わって、日本に帰る経由地マドリードに一日滞在して、ソフィア王妃芸術センターに行き、ピカソや、ダリ、ミロなど有名な画家の作品をたくさん見ることができました。中でもピカソの「ゲルニカ」は以前から実物を見たいと思っていた作品で、本物の迫力に圧倒されて、ずっと見ていたいほど魅力的でした。ゲルニカの展示室にはゲルニカが完成するまでの制作過程が分かる写真などもあって興味深い内容でした。留学中マドリードに行く機会があれば何時でも見に行きたいと思います。

メスキータ

メスキータ

ローマ橋

ローマ橋

コルドバギターフェスティバル

コルドバギターフェスティバル

コルドバギターフェスティバル

コルドバギターフェスティバル

ソフィア王妃芸術センター

ソフィア王妃芸術センター

学校生活

ギターレッスン

入学する前、日本の先生からBernier 先生はとても教え方が上手くて演奏も素晴らしい先生だという話はお聞きしていましたが、これまでBernier先生のレッスンを受けたことがなかったので、演奏スタイルや、フィーリング、また先生の求めるものと自分の求めるものが違ったらどうしようという不安が少しありながら入学しました。実際にレッスンを受けると、表現の指摘や、左手と右手の細かなテクニック、曲の背景、また、今の私に何が足りないのかなどさまざまなことを教えてくださいました。毎回のレッスンがマスタークラスのように内容が濃く、指摘されたことが全てできたら必ず成長できると思えるほど的確な指示をもらうことができます。Bernier先生は日本がとても好きなので、私の楽譜に日本語が書いてあると、この漢字はどういう意味でなんて読むの?と聞かれるので日本語を教えたり、先生が日本に来た時のエピソードを話してくれたりして、毎回楽しくて笑いの絶えないレッスンです。とても楽しく、しっかり的確なアドバイスで、内容の濃いレッスンを受けることができて、Bernier先生と出会えて本当に良かったと思います。日々努力して充実した留学生活にしていきたいと思います。

セビーリャ・スペイン広場

セビーリャ・スペイン広場

セビーリャ・スペイン広場

セビーリャ・スペイン広場

Bernier先生との写真

Bernier先生との写真

セビーリャ音楽院の様子

セビーリャ音楽院の様子

室内楽

昨年の室内楽は音楽院の先輩 Lupeさんとギターデュオを組んで学びました。初めてスペインの方とデュオを組んだので言語の問題や、フィーリングがしっかり合って意思疎通できるか不安でしたが、お互い演奏を良いものにしようという気持ちが強く、毎週互いの家に行って練習したりこまめに連絡をとって曲に対する考えを伝えあっていたので結果としてとても良いデュオにすることができました。取り組んでいた曲がお互いにメロディーを弾くパートがあったので、この旋律は何弦のどのポジションで弾いて、どのフィンガリングで弾くのか話し合い、できるだけ右手のタッチを同じにして、メロディーが交代したことが分からないようにし、あたかも一人が弾いているかのようにするためにこだわりました。ここまで一つの曲の細かなところまでこだわりぬいて仕上げたのは初めてだったので、改めて室内楽の楽しさを実感しました。
室内楽はBernier先生にレッスンしていただくのですが、二人では出てこなかったアイデアや解釈を教えていただきより洗礼された演奏になっていくので凄く勉強になります。

デュオのパートナーLupeさんと

デュオのパートナーLupeさんと

バロックギターのレッスン

音楽院の選択授業でバロックギターのレッスンを受けています。このレッスンを受けるとこでクラシックギターにも良い影響があると思い選択しました。バロックギターは肉弾きが基本なので、爪があると本来の奏法での演奏は難しいですが、バロックギターの楽譜の読み方、音色や表現のつけ方などを学ぶことによってクラシックギターでバロックの曲を弾くときに今までとは違った視点から考えられたり、利点がたくさんあると思ったので楽しみながら学んでいます。
今はまだ上手く弾けないことの方が多いですが、ゆっくり時間をかけて自分のものにして人前で演奏できるくらいまで上達したらいいなと思っています。

学校のバロックギター

学校のバロックギター

セビーリャギターフェスティバル

コンサート出演

2021年10月、Francisco Bernier先生が主催するセビーリャ国際ギターフェスティバルのコンサートにBernier先生の生徒として二人の先輩と共に出演させていただきました。
Espacio Santa Claraというとても素敵な修道院を改装した文化センターでした。
ギターの本場であるスペインの方々に演奏を聴いていただくことは初めてで、自分の演奏がどう捉えられるのか少し不安で特別な緊張感がありましたが、少しでもスペイン音楽に対する情熱が伝わればいいなと思いながら楽しんで演奏しようと心掛て臨みました。演奏後は、大きな拍手をもらうことができて、ほっとするとともにとても嬉しく、スペイン留学を良い形で進められていると思います。先生にはこのような経験をさせてくれたことにとても感謝しています。

セビーリャ国際ギターフェスティバル

セビーリャ国際ギターフェスティバル

フェスティバルで聴いたコンサート

フェスティバル期間中は色々なコンサートが行われています。私は毎日のように会場へ行って素敵なゲストの方々の演奏を聴きました。特に印象的だったのはフラメンコギタリストRycardo Moreno氏のコンサートです。セビーリャに来たら本場のフラメンコギターを聴いてみたいと思っていたのでとても楽しみにしていました。演奏は本当に素晴らしく、会場が一体となって、時々Ole! という声が会場の聴衆からも聞こえて来て、まさに本場の雰囲気を楽しむことができました。

Rycardo Moreno氏と

Rycardo Moreno氏と

コンクールファイナルの聴講

フェスティバル期間中に開催されたセビーリャ国際ギターコンクールのファイナルも聴きに行きました。今回はコロナ禍ということもあり予選はオンラインだったそうですが、ファイナルは会場で行われました。Vincenzo Caiafa 氏(Italia)
Elia Portarena 氏(Italia) Álvaro Toscano 氏(España) この3名の演奏を聴いたのですが、やはり海外の国際コンクールのレベルの高さを痛感しました。表現力や技術力の高さはもちろんのこと、曲の細かなところまで分析されていて、一音も無駄にすることなく一音一音の意味を凄く感じ取ることのできる演奏でした。近い将来私もこのコンクールに参加した時にはファイナルで演奏した3名のように曲への熱意が感じられる演奏がしたいと強く思いました。
フェスティバルを通して今までにない刺激をたくさん受け、改めてスペインで音楽を学ぶ喜びを感じました。

フェスティバル内コンサートのチラシ

フェスティバル内コンサートのチラシ

スペインギター音楽コンクールのID賞を活用してスペインで貴重な経験をさせて頂いでいます。今まで大変お世話になった日本のギター、語学、音楽科目の先生方、スペイン政府観光局、スペイン大使館の皆様への感謝の気持ちを忘れず今後も精進してまいります。

横村福音 Nene Yokomura プロフィール

2002年生まれ。
2008年より村治昇、金庸太に、2018年より東京音楽大学付属高等学校にて荘村清志、江間常夫に師事。
福田進一氏、エドゥアルド・フェルナンデス氏、ミゲル・トラパガ氏、ファビオ・ザノン氏、パブロ・マルケス氏、ジュディカエル・ペロア氏のマスタークラスを受講。
第25回山陰ギターコンクール・プロフェッショナル部門第1位
第8回イーストエンド国際ギターコンクール第1位
第10回J.S.バッハ国際ギターコンクール第2位
第37回スペインギター音楽コンクール第1位
ギターと時を同じくして書道も始め腕前は学童の部で10段。中学で全国書画展覧会に3年連続で入賞。実は左利き。