スペイン渡航記〜仲山涼太(ID賞)

サンニコラス広場からのアルハンブラ宮殿

第36回スペインギター音楽コンクールにてID賞を受賞し、スペインのギターフェスティバルに参加された仲山涼太さんが、素敵なレポートを書いてくださいました。12月発行の会報にも掲載しております。充実した旅の様子、刺激をたくさん受けて今後の演奏活動が益々期待される仲山さんのレポートから、この賞が本当に素晴らしい賞であることを改めて感じています。この渡航に際して参加費免除等の多大なるバックアップをしてくださったフェスティバル主催者であるフランシスコ・ベルニエール(Francisco Bernier)氏にも大変感謝申し上げます。また、長年ベルニエール氏のもとで研鑚を重ねている菅沼聖隆さんには今回も現地にて多大なサポートをいただきました。そして一昨年ID賞で同じくセビリャに行かれた茂木拓真さんが、再びこのフェスティバルに参加され、コンクールにも果敢に挑戦されたことも特筆に値します。
今回も引き続きID賞を授与してくださったIDホールディングス社に改めまして感謝申し上げますとともに、仲山涼太さんの今後のご活躍を祈念しております。

スペイン渡航記~仲山涼太
第36回スペインギター音楽コンクール優勝
参加フェスティバル:セビーリャ国際ギターフェスティバル

まずはこの度、スペインでの貴重な体験の機会を与えて下さったIDホールディングス社に感謝申し上げます。

今回僕はスペイン南部アンダルシア地方のセビーリャという町を拠点に旅をしてきました。
今回の渡航の大きな目的は二つ。
一つは第10回セビーリャ国際ギターフェスティバルにてマスタークラス受講・コンクールの参加でした。

フェスティバル初日は、マスタークラス講師陣4名のカルテット+オーケストラによるアンダルシア協奏曲、Juan M. Cañizares氏によるアランフェス協奏曲、セビーリャ出身の歌手Joana Jiménez氏によるファリャの恋は魔術師という、贅沢な内容のコンサートで幕開けでした。
ギターの音色とアンサンブルがとても心地良かったです。また生のアランフェスは初めてだったのですが、Juan M. Cañizares氏の主張あるギターはとても楽しめました。

David Martínez氏と

David Martínez氏と

マスタークラス初日はDavid Martínez氏に習いました。(受講曲:序奏とロンド/D.アグアド)
アポジャトゥーラやドミナント→トニックの和声の変化に対するアクセント・テンションのかけ方、またそれを表現するための右手の使い方(タッチの力加減、指が弦を捉えるまでの速さのコントロールなど)をご指導いただきました。
また各声部をオーケストラのチェロやバイオリンなどをイメージして表現していく重要性を学びました。

Andrew Zohn氏によるマスタークラス

マスタークラス2日目はAndrew Zohn氏によるレッスン。(受講曲:タランテラ/M.C.テデスコ)
ここでもアクセントの位置や段階的なクレッシェンドについてご指導いただきました。
その上で踊りの速さ・軽快さを損なわないことが大切で、運指の選び方についても研究の余地があると感じました。
また単音のフレーズを弾く際もその時の和音の性質を理解しておくことが重要だと気づきました。
僕が今まで曲を仕上げていく時にあまり意識してこなかったことが露呈され、今後の課題として浮き彫りになりました。

一次予選通過を喜ぶ茂木・菅沼・仲山

一次予選通過を喜ぶ茂木・菅沼・仲山

コンクールでは1次予選通過、本選出場はならずセミファイナルまでという結果でした。
本選に残った4名、特に優勝者と第2位の演奏者は技術的にも表現の豊かさ・音楽性の深さも抜きん出ていたと感じました。
大いに参考にすべき所があり、同時に国際レベルの指標を痛感しました。
また一つ大きな目標が出来、モチベーションを上げる機会となりました。

コンクール表彰式の様子

コンクール表彰式の様子

コンクール開催中はセビーリャ留学中のギタリスト菅沼聖隆さんが司会進行・アテンド等ご立派に務められていました。
期間中、お忙しいにもかかわらず親身に接してくださりとても心強かったです。

ベルニエール氏を囲む日本人勢

ベルニエール氏を囲む日本人勢

そして今回の渡航のもう一つの目的は、スペインギター音楽を語る上で欠かせないアンダルシア地方の空気を肌で感じるというものでした。
各地の文化遺産や観光地を訪れることはその地の歴史や文化を学ぶ一助となり、これは今後曲を演奏する上で大きく影響すると考えています。

今回訪れたアンダルシアの地は以下の通りです。

セビーリャ(セビーリャ大聖堂、セビーリャ美術館、インディオ古文書館、スペイン広場)
コルドバ(メスキータ、アルカサル、ユダヤ人街)
グラナダ(アルハンブラ、アルバイシン)

セビーリャ大聖堂

セビーリャ大聖堂

セビーリャ大聖堂内にあるコロンブスの棺

セビーリャ大聖堂内にあるコロンブスの棺

ヒラルダの塔から望むセビーリャ大聖堂

ヒラルダの塔から望むセビーリャ大聖堂

特にセビーリャ大聖堂、コルドバのメスキータはどちらも荘厳でこの地の歴史の重さを感じずにはいられない空間でした。只々その空気を全身で感じていたいと佇んでいました。

スペイン広場

スペイン広場

セビーリャの陶器

セビーリャの陶器

そしてアルハンブラはやはり壮大でした。
ヘネラリフェ、アルカサバ、カルロス5世宮殿etc…見所が多くどこもじっくり見て回りたかったのですが、メインのナスル宮殿への入場予約時刻があったため、どこかで時間を気にして回ることになってしまいました。

アルハンブラ・ナスル宮殿内部

アルハンブラ・ナスル宮殿内部

カルロス5世宮殿内部

カルロス5世宮殿内部

アルハンブラ・ライオンの中庭

アルハンブラ・ライオンの中庭

アルカサバ・ベラの塔。グラナダが一望できます。

アルカサバ・ベラの塔。グラナダが一望できます。

ヘネラリフェ

ヘネラリフェ

宮殿内はどこを見ても装飾の美しさに目を奪われ、同時に気の遠くなるような職人の作業に感銘を覚えました。タレガと同じ景色を見ている!という不思議な感動もありました。帰国後トレモロを練習し直したことは言うまでもありません。

サンニコラス広場からのアルハンブラ宮殿

サンニコラス広場からのアルハンブラ宮殿

アルハンブラを堪能するのに1日ではとても足りず、必ずもう一度訪れてその空気を身体に落とし込みたいと思いました。

グラナダの伝統工芸である寄木細工

グラナダの伝統工芸である寄木細工

ちなみに各地のユダヤ人街は工芸品やお土産物のお店が数多く立ち並んでいて、ここでも時間をかけることとなりました。特にセビーリャの陶器、グラナダの寄木細工はとても可愛く、悩む時間さえ楽しくなるほどでした。

メスキータ内部 850本の2重アーチ

メスキータ内部 850本の2重アーチ

メスキータ内部 レコンキスタ後に建てられた礼拝堂

メスキータ内部 レコンキスタ後に建てられた礼拝堂

メスキータ内部礼拝堂 左右に巨大なパイプオルガン

メスキータ内部礼拝堂 左右に巨大なパイプオルガン

フェスティバルが終わり帰国までの3日間はバルセロナへ移り、サグラダファミリアをはじめとするガウディ建築やピカソ美術館、本場のパエリアやガリシア料理を楽しみました。
サグラダファミリアは「生きている間に此処に来られて本当に良かった」と言うぐらい想像を絶する美しさでした。

サグラダファミリア

サグラダファミリア

サグラダファミリア内部2

サグラダファミリア内部2

サグラダファミリア内部

サグラダファミリア内部

グエル公園にて

グエル公園にて

カサミラ内部

カサミラ内部

僕の初のスペイン渡航は、これまでの人生には無かった学びと多くの刺激をもたらす価値あるものとなりました。
またそこには沢山の方々のご支援と応援があったことを実感しております。
今後の自身の音楽活動にしっかりとフィードバックしていき恩返し出来ればと思っています。

最後になりましたが、この貴重な体験と気づきの機会を与えてくださった日本・スペインギター協会の先生方、副賞のID賞としてご支援くださったIDホールディングス社へ深く御礼申し上げます。

仲山涼太 Ryota Nakayama プロフィール

14歳でギターを始める。エレキギター、JAZZギターを古賀和憲、竹田一彦の両氏に師事。クラシックギターを中川 誠、中川 亨の両氏に師事。
関西を中心にbar・cafeでのLIVE、結婚式等パーティでの演奏、録音やサポートなど、クラシックギターに限らず様々なジャンル・形態で演奏活動を行う。
また、演劇・朗読・書道家など音楽以外の芸術家とも積極的にコラボレーションし活動の幅を広げている。

第36回スペインギター音楽コンクール優勝。
第10回J.S.バッハ国際ギターコンクール優勝。
仲山ギター教室主宰。